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コラム

2021.02.15
遺言書の検認や執行とは?遺言書の作成から相続発生後までの流れを解説

死後の自分の財産をどうするかを、遺言書を残して指定しておきたいという方は多いと思います。けれど、遺言書を書いたら自動的にその通りになるわけではありません。遺言書を用意するなら、遺言書の内容がきちんと実現されるようにしておくことも大切です。
本記事では、遺言書の作成から相続開始後の遺言の執行までの流れを説明します。希望どおりの相続を実現する方法を知っておきましょう。

1. 遺言の作成

遺言による相続を行いたいなら、遺言書の作成が必要です。遺言書にはいくつかの種類がありますが、主に利用されているのは、自筆証書遺言または公正証書遺言です。まずは有効な遺言書を作成しておきましょう。

1-1. 自筆証書遺言の作成方法

自筆証書遺言は、自分で手書きして作る遺言書です。自筆証書遺言ならどこへも行かずに簡単に作ることができますが、形式的なルールを守らなければ無効になってしまうので注意が必要です。

1-2. 公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。作成に手間や費用はかかりますが、形式面では確実に有効な遺言書を作成できます。

公正証書遺言を作成するときには、事前に公証人に遺言の内容を伝え、原案を作成してもらいます。作成当日に証人2人の立ち会いのもと内容を確認し、署名押印して完成させます。

2. 遺言書の保管

せっかく有効な遺言書を作成しても、紛失すれば意味がありません。遺言書は適切に保管しておくことも重要です。

2-1. 自筆証書遺言の保管方法

自筆証書遺言を保管するには、次のような方法が考えられます。

2-1-1. 自宅に保管する

自宅のタンスや棚、机の引き出しなどに置いておく方法です。自宅に置いておくだけなら手間はかかりませんが、家族に内緒にしておきたい場合には注意が必要です。生前に家族に見つかれば、勝手に捨てられたり改ざんされたりする可能性がないとも限りません。一方で、わかりにくいところに保管すれば、死後に見つけてもらえないこともあります。

2-1-2. 貸金庫に保管する

自宅に保管するのが不安な場合、銀行の貸金庫に保管しておけば安心と考える人も多いでしょう。しかし、貸金庫の契約者が亡くなった場合、貸金庫はロックされてしまい、開けるには相続人全員の協力が必要になります。もし相続人の中に非協力的な人がいれば、貸金庫が開けられず、遺言書を確認できないことがあります。

2-1-3. 信頼できる人に預ける

遺言書を人に預けておく方法もあります。ただし、預けた人が遠方に引っ越したり、先に亡くなってしまったりすることもありますから注意しましょう。弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に自筆証書遺言の作成をサポートしてもらう場合には、専門家の方で遺言書を保管してもらえることもあります。

2-1-4. 法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する

2020年(令和2年)7月10日より、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が開始しました。この制度を利用すれば、遺言書の保管場所に困ることがありません。遺言者が遺言書を法務局に預けておけば、遺言者が亡くなった後に相続人が遺言書を閲覧等することが可能になります。

自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、法務局で形式面でのチェックもしてもらえるため、有効な遺言書を残せるというメリットもあります。

2-2. 公正証書遺言の保管方法

公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。遺言者には正本が渡されるので、遺言者は正本を保管しておく必要があります。もし遺言書の正本を紛失しても、公証役場には原本があるので謄本を発行してもらえます。

公正証書遺言を作成した人の情報は、日本公証人連合会のデータベースに保存されるので、相続人が遺言書の有無を検索することも可能です。

3. 相続発生後の遺言の種類ごとのケース

相続が発生したら、相続人はまず遺言書の有無を確認しなければなりません。遺言書が残されている場合には、法定相続ではなく、遺言書にもとづき相続が行われるのが原則となるからです。また、遺言書が発見された後に「検認」という手続きが必要なケースもあるので注意しておきましょう。

3-1. 自筆証書遺言の場合

亡くなった人が遺言書を書いていることを話していなかったとしても、遺言書が残されている可能性はあります。手書きで書いてあるものでも、自筆証書遺言として有効な場合がありますから、注意して探しましょう。

3-1-1. 自筆証書遺言の探し方

自筆証書遺言は、亡くなった人の自宅や施設など、身近なところを探すと見つかる場合があります。また、法務局に「遺言書保管事実証明書」の交付を請求すれば、法務局に自筆証書遺言が預けられているかどうか確認できます。

3-1-2. 自筆証書遺言は検認が必要

相続手続きを開始する前に、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。検認とは、遺言書の存在を相続人に知らせるとともに、遺言書の内容を明確にし、遺言書の偽造や変造を防止する手続きです。検認はあくまで遺言書を保全するもので、遺言の有効性を判断するものではありません。

なお、自筆証書遺言保管制度を利用して遺言書を法務局に預けていた場合には、検認が不要になります。この場合には、法務局で「遺言書情報証明書」を発行してもらい、遺言書情報証明書を金融機関等に提出して相続手続きを行います。

3-1-3. 検認手続きの流れ

自筆証書遺言の検認の流れは、次のようになります。

(1) 家庭裁判所に検認申立書を提出

検認申立書に必要事項を記入し、戸籍謄本一式を添付して家庭裁判所に提出します。検認申立書の書式や記入例は、裁判所のホームページで参照できます。

申立て時には遺言書を添付する必要はありません。提出する家庭裁判所は、亡くなった人の最後の住所地を管轄するところです。

(参考)裁判所:遺言書の検認の申立書
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_17/index.html


(2) 検認期日の通知

家庭裁判所から相続人全員に検認期日の通知が行われます。なお、申立人以外の相続人は、検認期日に必ずしも出席しなくてもかまいません。


(3) 検認期日

検認期日には、申立人は遺言書を家庭裁判所に持参します。家庭裁判所で遺言書が開封され、検認が行われます。


(4) 検認済証明書の取得

自筆証書遺言にもとづき不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の払い戻しを行う場合には、検認済証明書が必要です。検認済証明書は、裁判所に申請すれば発行してもらえます。発行には1通150円の手数料がかかります。

3-2. 公正証書遺言の場合

公正証書遺言が残されている場合、相続人が知っていることも多いと思います。しかし、全く知らない間に公正証書遺言が作成されているケースもありますから、探してみましょう。

3-2-1. 公正証書遺言の探し方

公正証書遺言の場合にも、亡くなった人の身近なところを探すと、正本や謄本が保管されていることがあります。また、公正証書遺言を作成した人の情報は日本公証人連合会のデータベースに保存されているため、相続人が公証役場で検索して公正証書遺言を探すこともできます。

3-2-2. 公正証書遺言は検認不要

公正証書遺言の場合には、遺言書に検認を受ける必要はありません。公正証書遺言の正本または謄本により、相続登記や預貯金の払い戻しができます。

4. 遺言の執行について

遺言書が見つかり、必要な検認手続きを受けたら、遺言を執行することになります。

4-1. 遺言の執行とは

遺言書の内容を実現することを遺言の執行と言います。遺言者は既に亡くなっていますから、誰かが遺言の執行を行わなければなりません。ただし、遺言書の内容によっては、遺言の執行が必要ないケースもあります。

たとえば、遺言の内容が相続分の指定であれば、遺言の効力が生じると同時に相続分指定の効果も生じるので、遺言の執行は必要ありません。一方、遺言の内容が預貯金や不動産を相続させることであれば、預貯金の払い戻しや名義変更という遺言の執行が必要になります。

4-2. 遺言執行者とは

遺言執行者は、相続開始後に遺言の内容を実現する人です。遺言の執行を滞りなく行うためには、遺言執行者を選任しておくのがおすすめです。遺言執行者が選任されていない場合には、相続人全員で遺言の執行を行わなければなりません。

4-3-1. 遺言執行者の選任が必要なケース

遺言執行者は必ずしも選任しなくてもかまいません。しかし、遺言で子の認知や相続人の廃除(相続人の資格をはく奪すること)を行う場合、相続人では執行ができないため、遺言執行者の選任が必須になります。

4-3-2. 遺言執行者の選任方法

遺言執行者は、遺言書で指定することができます。遺言書で遺言執行者が指定されていない場合には、相続開始後に家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。

4-3-3. 遺言執行者になれる人は?

遺言執行者には未成年者や破産者を除き、誰でもなることができます。相続人の中から遺言執行者を選んでもかまいません。トラブル防止のためには、中立的な立場の専門家(弁護士、司法書士など)に遺言執行者になってもらうのが安心です。

5. 遺言執行者は必要なの?遺言執行者がいないと起こりうるトラブル例

遺言書を作成するなら、あらかじめ遺言執行者を選任しておくのがいちばんです。遺言執行者がいない場合には、どういったトラブルが起こるのか具体例を見てみましょう。

5-1. 預貯金が引き出せない

遺言書に従って預貯金を受け取る人は、金融機関に対し預貯金の払い戻しや名義変更を求めることになります。金融機関は亡くなった人の預貯金の払い戻し等を行うときに、相続人全員の承諾を要求することが多くなっています。もし相続人の中に手続きに協力しない人がいれば、払い戻しができません。預貯金の相続手続きを行うために、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければならなくなります。

遺言書で遺言執行者が選任されていれば、スムーズに預貯金の相続手続きができます。遺言執行者には預貯金の払い戻しや解約の権限があるので、相続人全員の同意を得ずに預貯金の払い戻しを行うことが可能になります。

5-2. 不動産の名義変更ができない

亡くなった人の不動産を特定の人に遺贈する遺言書が書かれている場合、もし遺言執行者がいなければ、相続人全員の印鑑証明書を用意しないと相続登記ができません。この場合にも、協力的でない相続人がいれば、家庭裁判所での遺言執行者選任手続きが必要になります。

あらかじめ遺言執行者を選任しておかないと、手続きのために、余計な時間や手間がかかってしまうことになります。

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